言葉には神様が宿っている?!「言霊の幸ふ国」日本

今年も残り1ヵ月となりました。最近またコロナ、コロナと感染拡大が連日報道されていますが、2021年に「去年は大変だったね」とみんなで笑えるように、ここでまた気持ちを引き締めていきたいところです。大切な人たちと自分を守るためにも、手洗い、うがい、消毒とできることはやって、あとはできるだけ穏やかに過ごしたいですね!

今回は、「言霊」について書いていきたいと思います。「こんにちは」「ありがとう」「ごめんなさい」と小さい頃から、相手に伝えることの大切さを私たちは教わってきました。筆者も最近言葉の持つ力、特に「言葉が人をつくる」という点でそのエネルギーの大きさに改めて気づいたところです。


コロナ禍の今、会いたい人に会えない状態がつづいてますが、そんな時期だからこそ、言葉で伝えることがより大切になってきているのかもしれませんね。


「言霊の幸ふ国」日本は言霊によってしあわせがもたらされる国

声に出した言葉が現実をつくる。よって、言葉には魂が宿っている。そんな考えが古くから人々の無意識の中に定着していた日本。火には火の、水には水の、木には木の神様が宿ると言い伝えられてきたのも、「すべてのものに霊魂が宿る」という神道の教えが古くから根付いていた証かもしれません。

そうした点からすると、「言葉には言葉の神様が宿る」と考えるのはごく自然な流れだったのでしょう。よって、良い現実をつくりたいなら、明るく気持ちが前向きになる言葉を声にしようと、私たちは日ごろから言葉遣いに気を付けたり、ネガティブな表現よりポジティブな表現を選ぼうと働きかけます。

現存する日本最古の和歌集『万葉集』では、山上 憶良、柿本人麻呂が言葉の持つ力について次のように詠っています。

そらみつ倭の國は
皇神の嚴しき國
言霊の幸はふ國
(山上憶良)


葦原の瑞穂の國は
神ながら言挙げせぬ
然れども
言挙げぞ我がする
(柿本人麻呂)


前者は、日本は「言霊がしあわせをもたらす国」であることを詠い、後者はこの国はあまりはっきりと言葉にしませんが「私はあえて言葉にします」と宣言し、「どうかあなたが無事でありますように」と旅立つ人への別れの言葉が後ろにつづきます。


柿本人麻呂の歌にある「言挙げ」とは、自分の意思や考えをはっきりと周りに伝えることを意味します。いわゆる「アファメーション」ですね。よく受験生が「志望校に合格する!」「テストで100点を取る!」と先に宣言したり、「30歳で結婚する!」「〇〇会社に入社する!」「来月までに3キロ痩せる!」など言葉にすることで行動が伴い、結果につながることが私たちの日常生活でもよくあります。


人麻呂も「無事でありますように」と言葉にすることで、その人の無事を心から祈ったのではないでしょうか。有言実行に似ていますが、発した言葉が現実をつくるのであれば、大切な人と自分のしあわせを叶えるために言葉を使っていきたいですね。


言葉に表れるハレとケの文化

日本では「空気を読む」という言葉が浸透しているぐらい、その場の空気を重視する面があります。人麻呂がこの国は「言挙げしない」と表したのも、相手の振る舞いやその場の雰囲気から「察する」ことが古くから日本流のコミュニケーションとされてきたからかもしれません。


はっきりと自己主張することが良しとされる欧米では、この日本独自の言葉との付き合い方は理解されにくいところがあります。しかし、私たちは何でもかんでも言葉にするのではなく、大事な場面ではしっかり伝えることの大切さを学んできました。そうした伝え方を繰り返すことで、「阿吽の呼吸」という以心伝心の関係性を築くことを自然と目指しているのかもしれませんね。


このように「言葉で伝える」時とそうでない時の使い分けは、ハレとケの区別をする文化が言葉にも表れているといえます。表現数が豊富で、デリケートな日本語らしい美しさを筆者は感じますが、みなさんはどうでしょうか?


祝詞の由来は?美しい言葉は神様も動かすエネルギーがある!

神社では、神様に捧げる言葉として「祝詞」がありますね。神様を祝福し、感謝して、さらなる幸運を祈願します。その起源は古く、天岩戸神話までさかのぼることができます。


太陽神の天照大神が「天岩戸」にお隠れになると、1日中外は暗く、食べ物が育たず病気になったりと様々な困難が起こります。そこで、八百万の神様が協力して天照大神が岩戸から出てくるようにたくさんの工夫を凝らしました。


そこで、天児屋根命(あめのこやねのみこと)が岩戸の前で天照大神の美しさや偉大さを褒めたたえたところ、岩戸がかすかに開き天照大神が出てくるきっかけを作りました。これが初めて奏上された祝詞です。天児屋根命は、美しい言葉を操る「言葉の綾」にちなんで「言綾根」の意味を持つ言霊の神様とされています。


手に触れたり、口にしたり、実体を持たない言葉ですが、その力は神様をも動かすエネルギーに満ちています。何百、何千年の時を経て奏上される祝詞。そこには、今でも言葉の神様が宿っています。


最後に

今回は、言霊について取り上げてみました。今はメール、SNSと言葉を発信する場所もどんどんデジタル化しています。様々な手段がありますが、「ここぞ」という大事な時は「相手に伝える」ことを実践したり、宣言してみませんか?そして、自分も周りも気持ちよく過ごすために、日ごろから美しい言葉遣いを心がけていきたいですね!



執筆者

なぎの会HP管理人のacoです。香水づくりとWebライターとして日々奔走中の関西人。なぎの会の活動内容や神社の歴史をお伝えします。最近、香水のボトルデザインや見せ方について新しい発見がありました。寒くなってきたこの頃、本来の香りが美しく香るので香水愛が高まります。よかったら、noteも遊びに来てくださいね!


なぎの会

豊かな自然に恵まれた 宮城県・名取市の高舘山。 その山頂に鎮座する 熊野那智神社を活動拠点に 神社の歴史や魅力をお届けします。

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