お正月は年神様をお迎えしよう!2021年のはじまりに知っておきたい年神様のこと

大変革の2020年もあと数日で終わろうとしています。コロナで始まり、コロナで終わる。そんな印象が強い1年でしたが、みなさんにとって2020年はどんな年でしたでしょうか?

誰もが予期せぬ疫病との戦い、戦後最長の任期を保持していた内閣総理大臣の辞職、アメリカ大統領選挙と世界のあらゆる所で変化と混乱が引き起りました。ある意味、2020年は今後も忘れられないメモリアルイヤーになりましたね。

明るい兆しを信じて、2021年はみんなが前へ進んでいける年にしたいところ。そんな1年の幕開けとなるお正月は、実は年神様をお迎えする行事だということをご存知でしたか?門松やしめ縄を飾り、街中がどこか厳かで襟を正した空気になるお正月。筆者はこの時期の街の雰囲気こそ一番日本らしいと感じます。

今回は、そんな年神様についてご紹介します。一体、どんな神様なのか?色んな顔をもつ年神様の姿を紐解いていきます。


年神様ってどんな神様?

お正月にやってくる年神様。地域によって、大年神、正月様、恵方様、トシドンなど様々な呼び方があるのも興味深いですね。1年のしあわせをもたらしてくれる年神様は、その年の守り神といってもいいでしょう。


所説ありますが、『古事記』では年神様は須佐之男命(すさのおのみこと)と神大市比売(かむおおいちひめ)の間に生まれた大年神と同一とされています。年は穀物を意味することから、この神様は穀物神とされ、人々は1年の豊作を新年に願ったのだと言い伝えられています。


一方で、平安時代の神道資料である『古語拾遺』(こごしゅうい)においては、厳しく気性の荒い面が描かれています。田の神・大地主神(おおじぬしのかみ)が田を耕していた田人に牛肉を食べさせたことに激怒した大年神は、イナゴを放ち田を枯らそうとします。焦った大地主神は、お供え物をして大年神をお祀りしました。すると、苗が蘇り豊作となったのです。

他にも色んな顔を持つ年神様。それぞれどんな由来があるのか解説していきます!


年に一度やって来る年神様の3つの姿

来訪神

冒頭でも述べましたが、年神様は年に一度のお正月にやってくる神様。初日の出と共にこの世に降り立ち、山から下りて来られることから、来訪神とされています。来訪神とは、その名のとおり、天界からこの世にやって来る神様をいいます。


実は、来訪神にまつわるストーリーは現在も御神事として受け継がれています。たとえば、春の稲作がはじまると山の神様が田の神様に姿を変えて山から下りて来ます。そして、農民たちを見守り、五穀豊穣をもたらし再び山へ帰られるという「春秋去来の伝承」は、歴とした来訪神のお話しです。


また、毎年7月にやって来る水神様のため、小屋にこもり神聖な織物を織っていた「棚機津女(たなばたつめ)伝説」も来訪神にまつわるお話しです。お察しのとおり、この棚機津女による機織り神事は七夕のルーツとされています。


穀物神

この説は、『古事記』で描かれている穀物神を意味します。日本を代表する江戸時代の国学者・本居宣長は、「年とは、穀物を意味する登志(とし)のことである」と述べています。


まだまだ発展途上だった当時の日本では、お金よりも農作物や穀物など生きるために欠かせない食がとても大事にされていました。そのため、人々はその年の豊作を心から願ったのでしょう。その祈りを神様に届けるため、穀物神としての年神様をお正月にお祀りするようになったといいます。


先祖の霊(祖霊神)

おそらく、私たちにとって最も身近な霊的な存在は「ご先祖様」かもしれません。お仏壇にお供え物をしたり、お墓参りをしたりと、ごく普通の日常行事としてご先祖様とのつながりを私たちは大事にしていますよね。


地域によっては、ご先祖様は遠く離れた霊界にいるのではなく、子孫たちが暮らしている山の上から温かく見守っていると信じられてきました。こうした民間信仰では、ご先祖様を「祖霊神」と呼び、山・田の神様と同じく山から下りてこられる神様であることから3つを一つの神様(年神様)としてお祀りしていたそうです。



門松や鏡餅は神様の依り代だった?!

家やビルの入り口が門松やしめ縄で飾られるお正月。クリスマスの華やかなデコレーションから、和の美しさに早変わりする街並みもこの時期ならでは。お正月シーズンの到来を告げるこれらの装飾には、一体どんな意味があるのでしょうか?

まず、「門松」は必ず2体ありますよね。これは、神社の本殿前にある何かを連想させませんか?そうです、狛犬です!2体一つで神域を守る狛犬。門松が1対であるのも、この狛犬と同じ理由です。


生命力や繁栄の象徴である松と、長寿を意味する竹を飾ることで「ここは神聖な場所ですよ」と年神様にお知らせする依り代の役割を果たす門松。年神様に安心して来ていただく目印になります。


また、神様の依り代である鏡を象った「鏡餅」もお正月には欠かせないアイテム。天皇家の三種の神器、八咫鏡(やたのかがみ)を丸餅、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)をみかん(橙とも呼びます)、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)を串柿で表しています。


前年に収穫したお米を使って作る鏡餅は、穀物神である年神様への感謝の印でもあります。また、お正月は、両端が細くなった祝箸を使いますよね。そこには片方は神様、もう片方を自分で使うことから「神様と一緒にいただく」という意味が込められています。


前年の豊作に感謝し、今年のお恵みをお祈りしながら、神様と共にいただきましょうとの意味が込められたお正月のお料理。こうした由来を知ると、鏡餅やおせち料理をより滋味深く味わえそうですね。


年神様をお迎えしてよいお年を!

五穀豊穣、家内安全、無病息災などたくさんのお恵みをもたらしてくれる年神様。地域によってその姿も様々ではありますが、ここは八百万神の国・日本。どれか一つが正しいのではなく、そのどれもが年神様として広く受け入れられてきました。

大変革が起きた2020年ですが、その変化と混乱の流れは今も続いています。しかし、動じず淡々と受け止め、人々の健康とコロナ禍の終息を祈りに今日も神社には参拝客が訪れます。こうした日本人の姿は、強く、美しいです。


2021年のお正月は、年神様をお迎えしてよい1年のスタートにしましょう!最後になりましたが、約半年にわたり神社記事をお読みいただきありがとうございました。来年も、神社や神様にまつわるあれこれやなぎの会についてお伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。



執筆者

なぎの会HP管理人のacoです。香水づくりとWebライターとして日々奔走中の関西人。なぎの会の活動内容や神社の歴史をお伝えします。2020年はなぎの会をはじめ多くの記事を執筆する機会に恵まれ、ライターとして成長できました。これからも、香りと言葉の人として頑張ります!よかったら、noteも遊びに来てくださいね!


なぎの会

豊かな自然に恵まれた 宮城県・名取市の高舘山。 その山頂に鎮座する 熊野那智神社を活動拠点に 神社の歴史や魅力をお届けします。

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