神様の香りを聞いてみよう

みなさん、日本で香りといえば何を思い浮かべますか?西洋で香りといえば「香水」ですが、日本でまっ先に浮かぶのは、お香やお線香といった「和の香り」が多いかもしれません。

海外から来た人は、お醤油や出汁の匂いが日本の香りという人もいます。筆者も日本食に飢えて帰国すると、焚きたてのご飯やお味噌汁の匂いに「あぁ、帰ってきた!」と涙がちょちょ切れた経験があります。

今回は「香り」について、その歴史や神社で体験できる香りをご紹介します。香水に目覚め、神様の香りを調香している筆者にとってありがたいお題です。

香りはとても繊細で感覚的なものなので、今回はこれから読んでいただくにあたって一つお願いがあります。どうか五感にスイッチを入れて、イメージをフル回転させてください!「こんな香りかな?」と想像しながら、楽しんで読んでいただけると嬉しいです。


香りの歴史 「嗅ぐ」のではなく「聞いて」みよう!

最近は、香水やお香のほかにもルームフレグランス、ボディミスト、柔軟剤と手軽に香りを楽しむ機会が増えました。その反面、「香害」という言葉が飛び交ってしまうのは残念ですが、裏を返すとそれだけ日本には「いかに香らせないか」が重視されてきた独自の香り文化が根付いているといえます。

西洋の香り文化とは真逆の日本ですが、実は香水の語源であるPerfume (パフューム)はPer(~を通して)+Fume(煙)=「煙を通して」という意味を表します。これは、西洋でも紀元前から宗教儀式を行う際に、香木を焚いて神様に香りを捧げていたことに由来します。

今ではファッションの一部として取り上げられる香りですが、本来は神様との結びつきが深い神聖な存在だったのですね。日本には仏教の伝来と共に伝わった香り。その文化は「香道」となり、華道や茶道と同じく日本を代表する伝統文化として世界で認められています。

香道において、香りは「嗅ぐ」のではなく「聞く」と表し、その行為を「聞香(もんこう)」と呼びます。ゆっくりと味わうように、心の奥まで香りを届けて聞く行為は禅の精神そのものであり、仏教とともに伝来した香り本来の姿をうかがえます。


神社は自然の香りの宝庫 

聖域な神社に一歩足を踏み入れると、心がふわっと軽くなったり、シャキッと背筋が伸びる感覚を体験したことはありませんか?山や海、滝など自然豊かな土地に建てられた神社は、アクセスが不便な所に位置していることが多いですが、これは邪気を寄せ付けないためでもあります。

ご神木を中心に生い茂る木々や季節の草花、滝や岩など手付かずの自然に囲まれた神社は、自然本来のエネルギーに満ちており、日本らしいほのかな香りを楽しめる場所でもあります。

例えば、木々の香りを意味する「ウッディ」の香りは豊富にあります。本殿に近づくと香る上品な白檀の香り、その本殿を作る木材を削ったようなヒノキの香り、杜を歩くと桜、椿、桂、クスノキなどいろんな種類の木の香りが複雑に入り混じります。

春の梅や桜、夏のクチナシ、秋の金木犀、冬の水仙など神社に彩りを添える和の花も見逃せませんね。花の香りが風に乗ってふわりと飛んでくると、ついつい忘れがちな季節の移ろいを思い出すことができます。


水にも香りがある?神様の香りを体験

川や滝のある神社では、フレッシュで澄み切った水の気がその空間を作っています。その凛として研ぎ澄まされた気は、水の神様である高龗神(たかおかみのかみ)龍神さんが鎮座している証拠かもしれません。


とろんと甘い香気のする水もあり、そういう時は女性の神様である罔象女神(みずはのめのかみ)瀬織津姫(せおりつひめ)が守っているのかなと感じます。水そのものに香りはありませんが、透明がゆえにその地のエネルギーを反映しているのだと思います。

よく神社に参拝すると、花は咲いてないのにどこからともなく甘い花の香りが漂ってきた、という経験をされる方がいます。御香や甘露などいろんな表現がありますが、もしかしたら神様からの祝福なのかもしれませんね。


筆者も一度だけ体験したことがあるのですが、その香りをたとえると、花の蜜や果実、綿菓子のような可愛らしい甘さに高貴な気品がプラスされた「えも言われぬいい香り」でした。


ゆっくりと深呼吸して香りを楽しもう

実際に聞いてみないと中々ピンと来ないのが香りの特徴。はじめに「イメージをフル回転」とお願いさせていただきましたが、神社の香りがなんとなく伝わりましたでしょうか?


自然のエネルギーに満ちた神社は聖域なので、足を踏み入れると五感が研ぎ澄まされます。帰りに鳥居をくぐったあと「なんかスッキリした」「気持ちが楽になった」と心が前向きになるのは、それだけいい気をいただけた証しですね。


これから参拝される方は、ぜひ境内でゆっくりと深呼吸して、神社の香りを味わってみてください。どんな香りがするのか楽しんでくださいね!



執筆者

なぎの会HP管理人のacoです。香水づくりとWebライターとして日々奔走中の関西人。なぎの会の活動内容や神社の歴史をお伝えします。今回は筆者の専門である香りがテーマということで、いつもに増して熱い文章になりました。香りがある生活は心が豊かになって楽しいですよ♪ちょこちょこnoteにも香りについて書いてるので、よかったら遊びに来てくださいね!

なぎの会

豊かな自然に恵まれた 宮城県・名取市の高舘山。 その山頂に鎮座する 熊野那智神社を活動拠点に 神社の歴史や魅力をお届けします。

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